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Profile
株式会社メディヴァ
代表取締役 大石佳能子
大阪府箕面市出身。 幼少時代をニューヨークで過ごす。 大阪大学法学部卒業。 ハーバードMBA。 マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーを経て、(株)メディヴァを創業。 マッキンゼーではマーケティングと小売業、ヘルスケア部門を担当。 消費者視点での商品・サービスづくりを数多く立ち上げる。 著書に「消費者最優先企業の時代」(共著)、マッキンゼー・クオタリーにマーケティング、ヘルスケア関係の論文多数。 厚生労働省「これからの医業経営の在り方に関する検討会」、厚生労働省「社会保障審議会福祉部会」、日本経済調査会「これからの医療の在り方に関する検討会(大星委員会)」委員。
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医療経済を斬る メディヴァ代表 大石佳能子による連載コラム
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医療機関の再生に向けて(第2回)

2)医療機関再生の3つのアプローチ

 2000年に起業して以来、弊社はヘルスケア分野専門のコンサルタントとして活動して来たが、この間に医療機関を取り巻く経営環境は激変した。起業当初、医療業界の大きな課題は、「患者サービス」の導入や「医療機関の情報連携」であり、医療機関の経営は厳しいとは言われつつも、まだまだ余裕があった。昨今、弊社に持ち込まれる案件の多くは、医療機関の継承もしくは再生がらみであり、経営の継続性が格段と難しくなっていることを実感している。
 さて、本題である「医療機関の再生」であるが、非常に厳しい情勢ながら、一般的には医療機関の再生は「可能」と思っている。前号で書かせて頂いたとおり、医療機関が立ち行かなく原因には、制度の抜本改変等の「マクロ的な要因」に加え、「市場性の欠如」、「経営能力の欠如」、「不法行為」の3つの「ミクロ的な要因」が存在する。制度の改変によってその病院セグメントが全く無くなってしまう(例えば、介護療養病院制度が全面的に廃止される)場合は流石難しいが、そうでない場合は大体何らかの「再生可能性」が存在する。もちろんその過程で、コンセプトを抜本的に変える、経営層を入れ替える等の荒療治は必要になってくる。
 一般の企業の再生と医療機関の再生を比べた場合、統計的に捕らえた訳ではないが病院の再生のほうが「時間」が掛かる。これは、詳細を後述するが、医療機関の場合は「ヒト(人材)」が「生産材」であり、良い「ヒト(人材)」を得、育てることが「再生の肝」であるにもかかわらず、「再生」という宿命上、「ヒト(人材)」を得にくいことが主要因だと考える。
 経験上、医療機関の再生を行なうには、3つの視点が不可欠と思われる。この3つとは、「外科的視点」、「内科的視点」、「漢方的視点」である。これは何も「この3つの科目を揃えよ」、ということではない。事業を非常に大胆に「切り張りする」ことも(外科的視点)、じっくり「治していく」ことも(内科的視点)大事である。更に、病気を漢方を使って自己の免疫力や体力を上げるのと同様、最も重要な「生産材」である「ヒト(人材)」の持つ力を上げて行く。最後の「漢方的視点」が再生における、医療機関特有の要素である。下記にもう少し詳しく説明させて頂く。

① 外科的視点
 外科的視点では、主としてBS(財務諸表)に注目し、医療機関の持つ資産や負債の整理を行なう。再生の原資としてキャッシュが必要となるので、その原資を捻出するために、例えば遊休土地を売却し資産を整理するであるとか、病院の土地建物を一旦ファンド等に売却し、それをまた借りることによりオフバランス化をはかる。また負債に関しては、借り手との交渉により負債の圧縮や返済条件の変更(返済期間の延長等)を行なう。これにより、身軽になって再スタートを切る。
 また、医療機関の事業内容にもメスを入れる。特に「市場性の欠如」により経営不振に陥った医療機関の場合は、科目の削減や業態を大幅に変更することもある。それに併せて、売却可能な検査機材等は売却し、少しでもキャッシュに替え、コスト負担を減らす。

② 内科的視点
 内科的視点では、主としてPL(損益計算書)に注目し、売上を上げ、コストを下げ、効率を上げる。病院の場合、入院患者が増え、単価が上がり、病床が稼働しないと売上は上がらない。入院患者は、「外来」、「紹介」(診療所)、「転院」(他の病院)が主なルートになる。ルート別にどこがポテンシャルがあるか、具体的に誰がどういうアクションを取ると患者増、病床稼働に繋がるかを検討し、順々に手を打って行く。難しいのは、病床を稼働させようと思うと、「ヒト(人材)」が必要となることである。例えば看護師が足らないと、入院のニーズがあっても稼働させることは出来ない。このため、まずは十分な人数を採用しなくてはならず、売上に先行してコストが発生する。これは先行投資であるが、一般企業では再生時にはまずは「リストラ」を行なうので、他業界から来た投資家には分かり辛いポイントである。
 一方、人員の数だけが増えても効率が悪化するので、業務改善およびスタッフ入替も行なう。経営状態の悪い医療機関は、患者数も少なく暇なことが多いので、患者数が増え、実施する医療内容も高度になるとそれについていけないスタッフが発生する。この段階で始めて「リストラ」に着手する。
 また経費側も、全面的に見直す。多くの場合は納入業者のコントロールが全く出来てないので、価格、条件を再交渉することにより、大幅なコストダウンが可能である。
   
③ 漢方的視点
 コンセプトが決まり、方向性が定まり、ある程度人員も揃った段階で、最も注力するのが、スタッフのモチベーション向上や組織風土の改善である。再生案件になってもまだその医療機関に残っている優秀なスタッフや、あえてそのような職場を選んだスタッフは、本来的なポテンシャルは非常に高い。それらのスタッフが自信と誇りをもって、職務を遂行できるよう、荒れた組織風土を改変し、モチベーションを上げて行く。
 医療職の場合は、その医療機関の「理念」に共感し、経営者が真面目にその「理念」の達成を目指していることが分かり、一歩一歩であっても良い方向に物ごとが動いている実感を持つことがモチベーションに直結する。給与条件等も重要であるが、むしろ上記の「理念」や「進歩」と、平等でフェアに扱われているという実感が満足を呼ぶ。満足度とコミットメントの高いスタッフは、必ず良い医療の担い手になり、それが最終的に再生の成否を決めるため、この「漢方的視点」は再生のプロセスにおいて、龍の眼に最後の「点」を入れるようなものだと筆者は思っている。

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