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Profile
株式会社メディヴァ
代表取締役 大石佳能子
大阪府箕面市出身。 幼少時代をニューヨークで過ごす。 大阪大学法学部卒業。 ハーバードMBA。 マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーを経て、(株)メディヴァを創業。 マッキンゼーではマーケティングと小売業、ヘルスケア部門を担当。 消費者視点での商品・サービスづくりを数多く立ち上げる。 著書に「消費者最優先企業の時代」(共著)、マッキンゼー・クオタリーにマーケティング、ヘルスケア関係の論文多数。 厚生労働省「これからの医業経営の在り方に関する検討会」、厚生労働省「社会保障審議会福祉部会」、日本経済調査会「これからの医療の在り方に関する検討会(大星委員会)」委員。
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医療経済を斬る メディヴァ代表 大石佳能子による連載コラム
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特定健診等の義務化が市場にもたらす影響とサービス事業者としての準備

特定健診等の義務化が市場にもたらす影響とサービス事業者としての準備
—㈱メディヴァと㈱イーウェルの取組み紹介—

1)市場環境と当社の提供価値
 平成20年度から開始される特定健康診査、特定保健指導の実施義務化に関しては、現段階では未だ多くの保険者が混乱状態にあると言っても過言ではないのではないだろうか。各健康保険組合を周り、状況をヒアリングすると、実施計画、体制が確定している健保は、感覚的ではあるが1割に充たない。多くの健保は、実施計画、体制を決めたくても、集合契約や健保連システムの整備状況が不確定であることや、保健指導の投資対効果が見えないことには先に進めない状況に陥っているようだ。

 一方、サービス提供者である医療機も混乱しているように思われる。医療機関は特に情報が遅く、最近支払い基金への登録指示が連絡されるに至って、ようやく同制度へ意識が向いたようである。
 同制度への対応方法は、地域の医師会によって異なっており、「医療機関の独自性に任す」地域も有れば、「医師会でまとめて登録するので、各医療機関は申請を出さないように」という指示が来ている地域や、「特定保健指導は医師会が保健師を雇って実施するので、各医療機関では受けないように」という地域もある。また、「特定健康診断は、医師が診なくても良い健康診断であり、厚生労働省は『医師飛ばし』をもくろんでいる」という怪情報が流れている地域もある。
 このように提供者も受け手も混乱気味であるため、当社は提供サービスを単に「健康診断を手配する」であるとか、「保健指導を実施する」という部分的なサービスではなく、「総合的なソリューション・サービス」と定義した。顧客は、健保保険組合と医療機関の両方であり、提供価値は「負荷を掛けずに効果の高い特定健康診断、特定保健指導を実現する」ことである。これにより、当社はパートナー会社である㈱イーウェルと共に、全国の医療機関で健康診断と保健指導が受けられるネットワーク構築を実現した。

 健康保険組合に対しては、特定健康診断、特定保健指導の実施体制を構築し、予算化し、事業主との間を調整するコンサルティングから入り、健康診断の契約・予約・清算代行、受診率向上施策の実施、健康診断データの管理、階層化、保健指導の実施、結果管理までを一気通貫のサービスとして提供する。もちろん部分的な採用も可能であるが、人手の足らない健保組合の場合、完全なアウトソースも可能な仕組となっている。
 医療機関に対しては、健康診断や保健指導の営業、院内での実施体制構築や業務フロー改善のコンサルティング、情報システムやHPの整備、院内人材の教育、保健指導プログラムの提供、保険師や管理栄養士の派遣を行なう。多くの医療機関が診療報酬の切り下げにより経営が厳しくなっているなか、この新制度を新たな収入源として期待する一方、営業、システム、人材に投資できない現状がある。当社のサービスは、医療機関の負荷を最小限に抑えながら、特定健康診断、特定保健指導の実施機関としての参加を目的としている。

2)㈱イーウェルのサービス:健康診断手配と結果管理
 当社のサービス提供パートナーである㈱イーウェル(千代田区;http://www.ewel.co.jp)は、企業の福利厚生のアウトソーシング・サービス事業から発展した。プライバシーマークも取得しており、顧客は、大手の企業を中心として708団体、114万人である。
 ㈱イーウェルの場合、顧客企業から健保組合を紹介され、健診業務のアウトソース・サービスを始めたのだが、元々企業向けに健康関連メニューを提供していたこと、人事関連の個人情報を扱い慣れていたこと、各種サービスの手配を行うためにコールセンターを整備していたことにより、サービス提供に適したポジションにいた。
 同社は、企業健診を受託していた頃から構築した1000カ所におよぶ健診機関のネットワークを持っている。既存ネットワークを使う場合と異なり、イーウェルの健診ネットワークは健保組合のニーズに合わせて、どんどん増やすことができる。例えば、岩手や北海道等の地方都市に工場があった場合、利便性を確保するためには、その地域での健診機関との契約が必要となってくる。同社の場合は、そのようなニーズに応えて、提携健診機関を増やしている。また、特定健診の項目だけでは受診者にとって魅力が薄いと思う健保に対しては、婦人科や乳がん健診が受診可能なネットワークを提案する。

 サービスの特徴は、健診に関わる一切の「付随業務」をアウトソースで受託することである。受診者の案内や受付、問い合わせ対応やデータ管理だけでなく、顧客の要望により、未受診者のリストを作り、電話等で受診促進を行うことも実施している。健診機関がデータでの結果送付に対応してない場合、紙で貰って入力業務も代行する。
 受診者への健診受付を行う時にポイントとなるのはコールセンターのキャパシティと処理能力であるが、現状20人のコールセンター体制を引いており、今後の顧客増に合わせて、人員体制も強化していくそうだ。コールセンターの体制,能力は非常に重要で、他のアウトソース会社でも健診手配業務を実施しているところはあるが、自前でコールセンターを抱えているところは殆ど存在せず、別の取り次ぎ機関に再委託をしている。このためキャパシティがオーバーして受診申込の電話が取れなくなる事故が発生することも稀ではないそうだ。
 健康診断の結果データに関しては各健診機関から一括で貰い、保管・管理する。KENKOBOXというASP方式の健康データ管理システムも独自で開発している。健康診断結果がKENKOBOXに保存されている場合、受診者は過去の健診をインターネットの専用HPを通して閲覧し、動画、静止画で各種健康情報を取得することができる。
 
3)㈱メディヴァのサービス:保健指導体制づくりと保健指導の実施
 ㈱メディヴァ(世田谷区;http://www.mediva.co.jp) は2000年にコンサルタントと医者が共同で設立した医療専門のコンサルティング会社であり、医療機関や健保の現場にスタッフを派遣し、アドバイス後の運営支援を行なうことを特色としている。メディヴァの保健指導プログラムも、元々医療機関において生活習慣病指導を代行することを目的に、経済産業省の「健康づくり事業」創出助成金を受けて平成17年度に開発した。

 当社は、単なる保健指導サービスのアウトソースだけではなく、保健指導体制整備を含めた「総合的なソリューション」を提供している。厚労省の提示した推計値によれば、40から74歳の対象者のうち、保健指導が必要となる者は男性の場合36.4%、女性の場合16.2%となる。男性の比率が女性の比率の倍以上であることを見ても、メタボは「男性の問題」であることが分かるのであるが、男性の多くが「従業員」であるため、保健指導の実施率を上げるためには、事業主と協力して、職場で保健指導を行う必要がある。
 このためには、事前に事業主と実施スタンス、体制、方法に関する入念な調整が必要となる。経営層に働きかけ、「就業時間中に保健指導を受けても良い」というお墨付きを貰うことも、各現場の都合に合わせてスケジュールや体制を組むことも求められる。例えば、営業職は勤務時間中、殆ど事業所にいないことがあり、その場合、どうするか?工場は2シフト体制で動いている場合があり、その場合、どうするか?具体的な設計には、どこの事業所に何人どういう働き方の人が居るか、まで考えなくてはならない。

 保健指導実施者に関する課題も存在する。大きな健保組合であれば、「健康管理センター」があり、そこで保健師、看護師が活動している。既存の人的資源として、これらの保健師、看護師を使うのが健保にとってコストが抑えられるが実際上は難しい。健康管理センターの保健師、看護師は、社内健診や診察の手伝い、メンタルの相談など、保健指導以外の仕事に携わっている。忙しい中で、特定保健指導のキャパシティはどれくらいあるのか?仮に、キャパシティに問題がなかったとしても、スキル上のミスマッチが発生しがちである。メタボの問題への対処はまず「食事指導」が重要であるが、これは保健師、看護師よりも管理栄養士が得意とする分野である。
 当社では、まずコンサルタントが社内の体制の整備からお手伝いをする。例えば、事業主との調整を担い、「工場用」、「事務系職場用」、「営業用」等、各職場の働き方にあった保健指導方法を提供する。健康管理センターを調べ、既存体制で実質的にできる範囲を判別した後、その「穴」を埋めるべく当社の保健指導体制を構築する。人員が足らない場合は、当社が保健指導業務を請け負うこともあれば、人材提供を行うこともある。スキルが足らない場合は研修を実施したり、当社の保健指導プログラムを提供したりする。

 体制を整備した後、実際の保健指導を開始するのであるが、当社の保健指導のプログラムの特色は、対象者の行動を「大きく変える」のではなく、対象者の行動に「寄り添う」プログラムであることだ。
 「寄り添い」型のプログラムとは、出来る限り対象者に負担を掛けないプルグラムである。今まで運動を殆どしなかった人に、突然運動をさせることや、殆ど食事に気を使わなかった人に毎日食事記録を付けさせるなどは、継続性の点で大きく難がある。特に、メタボで悩む人の多くは、背景にストレスを抱えている。指導をすることによりストレスを増やすのは、むしろ逆効果となる。
 弊社のプログラムでは、まず独自のアセスメントシートを使い、対象者のメタボに関する「知識」と「関心」をセグメンテーションし、典型的な生活パターンを把握する中で、当人が「何気なく」行っている課題を抽出し、注意を換気しながら、改善を促す。「何気なく」行なっている課題に注目するのは、「何気ない」ものほど改善が容易であるためだ。「何気なく」やっている行動は、意識をすると止め易く、ストレスなく変えることができ、その後徐々に難しい課題に取り組むようにしている。

 保健指導を実施する中で重要なのは、ストレスの扱いである。多くのメタボの背景にはストレスが存在する。対象者の抱えているストレスを排除する為に、「傾聴」の態度や、小さな行動変容が実現した時に必ず「褒める」ことを重視している。
 当社は、全国の医療機関に対し、保健師、管理栄養士を派遣し、プログラムも提供することにより、健保の加入者がどこでも同じレベルの保健指導が受けられる体制を構築中である。
 保健指導の効果としては、3ヶ月から6ヶ月の間に生活習慣病に関連した各数値に改善が見られている。また、薬が不要になった等の根本的な改善例も見られている。
 
5)医療機関向けサービス
 健保組合とともに特定健康診断、特定保健指導のもう一方のプレイヤーである医療機関に対しても、㈱イーウェルと㈱メディヴァは共同で「総合的なソリューション提供」サービスを目指している。
 医師会に加入している医療機関は、集合契約を通してほぼ自動的に国保加入者分の健康診断の受託者になる。しかしながら、従来は住民健康診断制度を通して健康診断を実施していた健保組合の被扶養者に関しては、今回の制度では集合契約の対象外となる可能性も出て来た。㈱イーウェルでは、意欲の高い医療機関をネットワーク化し、健保組合に対して営業を代行することにより、医療機関の健康診断受託の機会を増やしている。一方、㈱メディヴァでは、特定健康診断受託機関としての要件であるHPの作成や情報システムの整備と共に、健診を効率よく実施できるような業務フロー整備をコンサルティングする。

 また、医療機関が健康診断を受託する要件として、特定保健指導を実施することが求められるようになるが、そのために必要な体制整備も支援する。保健師、管理栄養士の派遣や教育、保健指導プログラムの提供、結果管理、保健指導の営業代行等を担うことにより、医療機関に取っては手間や余分なコストが掛からずメディヴァと同じプログラムを用いた保健指導を実施することができる。
 健康診断や保健指導を実施することができる「効率効果が高い医療機関ネットワーク」を構築することによって、健保組合も平成20年度の新制度に取組みやすくなる。㈱イーウェルと㈱メディヴァは健保組合と医療機関との間を橋渡しし、双方に「総合的なソリューション」を提供することにより、win-win-winの関係を構築し、その成果して個々人が健康になる仕組みづくりを目指している。

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