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今まで述べて来たように、「施設在宅」には「自宅在宅」にない様々な特異性があるが、実際「施設在宅」を展開している現場は、どのような工夫をこらしているのだろうか。
当社がコンサルティングしている先に医療法人プラタナスという世田谷を中心に展開しているクリニックがある。同法人は、平成16年より日本最大の有料老人ホームのチェーンであるベネッセスタイルケアの提携医療機関となり、現在1000人を越える患者さんに対して訪問診療サービスを提供している。中核となっているのは平成17年12月に開設した松原アーバンクリニックという18床の有床の在宅療養支援診療所である。松原アーバンクリニックでは、「施設在宅」とともにターミナルケアを中心とした「自宅在宅」を展開している。
http://www.plata-net.com
松原アーバンクリニックは、ベネッセスタイルケアのアリア松原という特定有料老人ホームと同一敷地内に開設されており、「施設」と「自宅」を合わせて、合計7人の常勤医師、6人の非常勤医師、10人以上の当直医が活動する拠点となっている。「施設在宅」を担当する医師は、それぞれ100〜150人の患者の主治医となっており、城南地区を中心としたベネッセホームに訪問診療を実施している。
同クリニックの「施設在宅」は、3つの特徴がある。一つは、有床診療所としてバックベッドを持っていることである。狙いとしては、市中の病院がなかなか受けてくれないホームの患者さんやターミナルの患者さんを、医療的に可能であれば有床診療所に入院してもらおうというものである。このため、一般の有床診療所とは異なり夜間も医師が常駐する当直体制を整備し、これにより院内での看取りも可能としている。また大病院とは異なる小回りの効くホスピタリティを重視した運営を行うことにより、ホームほどでは無いにせよ、患者さんにとって居心地の良い空間の演出に努めている。
二つは徹底して「チーム医療」とシステム化に拘ったことである。在宅療養支援診療所として、24時間365日往診するとすれば、それは一人の医師が抱え込む形では無理である。一人の医師が抱え込むと、毎日当直しているのと同じようになり、医師本人が負荷に耐え切れなくなる。このため、同クリニックでは電子カルテを使い、完全な患者情報共有化を目指している。当直医を含め全医師は電子カルテ等を使いながら患者さんの状況を確認し、連携して治療に当たることが出来る。一方、「施設」であれ、「自宅」であれ、必ずしもベッドサイドで患者情報をパソコンに入力することは容易ではない。このため、医師は訪問先ではメモをとって後で入力する形を取る。またこれも難しい場合は、ディクテーション機に診療内容を吹き込み、鹿児島にある入力センターでテープ起こしをし、電子カルテに貼付けるという流れも活用することにより、効率化している。
三つ目は、「ご家族報告書」という開示カルテに類したものを月に一度入居者の家族に配布することにより、常に患者さんの情報を離れて暮らす家族と共有化している。これにより、家族が知らない間に病状が悪化しているという事故を減らすように努めている。
これらの3つの特色よって、医療法人プラタナスでは、ベネッセスタイルケアとともに新しい「施設在宅」のあり方を模索している。前述にある「施設在宅」の5つの特異性のなかで、病院への搬送、家族との連携の課題はある程度解決できているものもある。しかしながら、重度の認知症の患者さんは手の少ない有床診療所では入院させるのは難しいことや、サービス業的な対応を求める家族と医師との期待値のギャップや、看護師が不在のため施設において提供できる医療が制限されること等、課題はまだ山積している。
しかしながら、医療法人プラタナスではベネッセスタイルケアとともに、理想とする「施設在宅」とその中で求められる医療と介護の連携を確認し合いながら、個々の課題を取りあげ、解決に向けて両者共同で一歩一歩進めている。日本型の「施設在宅」は、行政も「有るべき姿」を定義しえていないように、まだ黎明期にあると思われる。この中で重要なのは、現場の課題を踏まえながら、医療と介護の提供者が患者さん(入居者)のことを考え、お互い本音で議論しながら新しい仕組を作って行くプロセスではないだろうか。
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