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Profile
株式会社メディヴァ
代表取締役 大石佳能子
大阪府箕面市出身。 幼少時代をニューヨークで過ごす。 大阪大学法学部卒業。 ハーバードMBA。 マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーを経て、(株)メディヴァを創業。 マッキンゼーではマーケティングと小売業、ヘルスケア部門を担当。 消費者視点での商品・サービスづくりを数多く立ち上げる。 著書に「消費者最優先企業の時代」(共著)、マッキンゼー・クオタリーにマーケティング、ヘルスケア関係の論文多数。 厚生労働省「これからの医業経営の在り方に関する検討会」、厚生労働省「社会保障審議会福祉部会」、日本経済調査会「これからの医療の在り方に関する検討会(大星委員会)」委員。
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医療経済を斬る メディヴァ代表 大石佳能子による連載コラム
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施設在宅の役割と今後の方向性(2)「施設」在宅の特異性

2)「施設」在宅の特異性

 さて本論である「施設」における在宅医療について、であるが「施設在宅」は「自宅在宅」と在宅医療である点は同じであるが、いくつかの特異な点が存在する。入居者のQOLを確保するには、「施設在宅」の特異性を理解しながら、医療サービス提供体制を組み立てることが求められる。

 筆者が見るところ、「施設在宅」の特異性は5つある。まず一つには、一カ所に多くの入居者が住んでいるため、診察の効率性が良い点である。「自宅在宅」と異なり、一カ所づつ点在する「自宅」を訪問する必要性がないため、一日に診ることができる患者さんは、3、4倍に増加する。診療報酬的は、「施設」全体が一つの「家」(患家)となるため、同一患家の適応となり、往診料は一人目の患者さん以降は算定出来ないが、それでも経営的には優位である。

 一方、「自宅在宅」に比べて「施設在宅」が難しい面もある。これが、二つ目以降の特徴であるが、まずは家族が同居していないため、コミュニケーションを初めとして「自宅在宅」にはない配慮が必要となる点である。「自宅在宅」であれば、患者家族は日々刻々と変わる患者さんの病状を理解しているし、医師も家族に確認を取りながら診察を進めることが出来る。患者家族が介護だけでなく、医療に関わることが出来るので、そこでは自ずとチームワークが育まれ易い。一方、「施設在宅」では患者家族は離れて暮らしているので、連絡を取るのが難しい場合もある。病状が悪化していく経過を知らない家族から、「何故こんなことになっているんだ」と驚かれないように密にコミュニケーションを取ることが求められる。家族の都合によっては往診日に立ち会うのが難しいこともあり、別途日程を設定して説明することになる。その場合でも、「自宅在宅」で育まれるようなチームワークに持ち込むことは難しい。

 三つ目は、「施設」の種類にもよるがホームと診療所が不可分のものとして扱われる結果、「自宅在宅」以上にサービス業的要素が求められる点である。入居者家族に対してとったアンケートを見ると、「施設における看護サービス」と「外部の医療機関が提供している医療サービス」は同一不可分で、同じく「高い入居金を払って買ったサービス」として位置づけられていること方が多い。このため、医師の説明、態度、風貌、服装等に対し、外来診療や通常の在宅医療では要求されないレベルが求められることがある。医療をサービス業として捕らえるのであれば、これらは本来医療機関が約束すべきことかもしれず、そういう意味では「施設在宅」は日本の医療の先行指標となるかもしれないが、現状では医療者、特に医師にとっては必ずしも納得性の高い指摘ではないようだ。

 四つ目は、「施設」が病院から見ても位置づけが中途半端であるため、しばしば搬送先に苦労するということである。病院から見ると、「施設」は看護師が雇用されているし、訪問診療をしている医師も居るのだから、大概の医療上の課題は施設内で解決すべきである、と思いがちであり、それを理由に受入を渋る場合もある。実際のところは、殆どの「施設」において看護師は日勤帯しかおらず、訪問診療の医師も駆けつけることは出来ても、高度な検査機器や治療用の設備が無いなかでは出来ることに限界がある。これは病院の勤務医が全般的に在宅医療に対する理解が薄いため発生する問題であるが、「施設在宅」の場合は特に「自宅」でないという点で、先入観が発生し易い。

 最後に、「施設」在宅の医療行政上の位置づけが確立しておらず、医療面でも経営面でも課題が発生しがちである、という点である。平成18年度の診療報酬改定でも、特定有料老人ホームが「看護師の配置義務がある」という理由で、一旦、在宅医療総合管理料の適用から外された。これは、「看護師の配置義務がある」からいと言って、看護師が常駐している訳ではないことと、在宅医療総合管理料の対象外となった場合、「施設在宅」が経営的に成り立たないということに対する認識不足があったのではないか、と推測される。更に、「施設在宅」の効率性だけが強調されて、上記の2〜4に上げた、「施設在宅」に掛かる特異な負荷は考慮されていないと思われる。現時点では診療報酬上の課題は解消されたものの、より重大な問題として「施設」で行われる医療行為の問題が残っている。「施設」に対してはいくつかのケースを除き、訪問看護師が外から入ることは不可である。しかしながら、「施設」の看護師は日勤帯しか勤務していない。一方、「自宅在宅」であれば家族に許された医療行為も、介護へルパーが実施することは不可である(図)。この結果、本来であれば、「施設」を「終の住処」として利用したい入居者が、本来であれば訪問看護師が行うか、家族が行う医療的ケアを受けられないため、退去しなくてはならないケースも発生する。このように、経営的および医療的な問題を例に上げたが、これらは個々に対応するだけでなく、行政として「施設在宅」の有用性を認識し、「有るべき姿」を定義する中で始めて解決することだと思われる。

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