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1)「病院」より「施設」へ
医療制度改革の一つの大きな目玉は、療養病床の削減と在宅医療の充実である。平成18年度の診療報酬改定では、療養病床、特に介護療養病床に関しては削減、廃止の方向と決まり、在宅療養支援診療所の制度が新設された。医療密度が低い、長期療養中の患者さんを「病院」から出して、「自宅」に帰そう、という動きは欧米では当たり前のことである。
「病院」は「治療」の場である。「治療」を行う為に、医師、スタッフ、ベッド、機器等の大きな固定費を掛けていて、
それらを社会的資源として有効活用するためには、治療密度の高い患者さんに入院してもらうことが望ましい。高齢化が進み、医療費の適正化が求められる中、医療依存度の低い患者さんを病院から出して行くのは当然の流れと思われる。
また、コスト側だけの問題ではなく、QOLを考えても「自宅」に帰ることができる患者さんにとっては、退院するほうが望ましい。病院は「治療」の場であるため、「治療」を優先して患者さんの日常生活の自由は束縛されざるを得ない。もちろん病院によっては、患者さんの自由を大幅に認めているところもある。例えば、鴨川にある亀田総合病院のような一部の病院では、「患者様中心主義」を徹底していて、患者さんが望むのであれば家族が一緒に泊まることも、治療に差し支えないのであれば食事や飲酒も可能である。しかしながら、このような病院運営はオペレーション的には非常に難しく、一部の病院でしか実現できない。
コストとQOLの二つの視点から、「病院」から「自宅」へ、という流れが進められており、それは大きな流れで言うと極めて適切なものと思われる。では、何が問題になるのだろうか。医療機関へのコンサルティングを行う中で筆者が感じるのは、「長期的方向性」は正しくても、そこまで持って行く「方策」が整備されていない矛盾である。
昨年の診療報酬改定以来、療養型の病院から多くの相談を受けており、その中の一部に関しては閉院のお手伝いもさせて頂いた。その時に感じたのは、「病院から退院出来る患者さんは、すでに退院している」ということである。100床ほどの病院には、約100人の患者さんが居る訳であるが、そのうち「自宅」に帰ることができるのは、20%程度である。残りは、独居であったり、家族が介護できない状態であったりと、「自宅」に帰ることが容易ではない。閉院をお手伝いした病院の場合は、一人一人の患者さんを地方を含めた他の療養型の病院や老健施設や老人ホームに転院先を探し、一部の方は「自宅」に帰り、何とか行き先を確保できた。これは3ヶ月以上も掛かる非常に大変な作業で、当社のコンサルタントが2人、病院と協力しながら何とか実現できたが、非常に難しい仕事であった。電話口で「閉院します。医療、介護の支援をしますから、ご自宅に帰れないでしょうか」と言ったとたん、一切電話に出なくなったご家族も居た。また患者さんご本人のほうも、「自宅」に帰って、ご家族に迷惑を掛けたくない、という気持ちが働いている。
「自宅」に帰れない、でも「病院」から出なくてはいけない患者さんの一つの行き場が「施設」である。「施設」とは、特別養老老人ホームや、有料老人ホーム、グループホーム等一連の「老人ホーム」を指している。実は、欧米では「在宅」で亡くなる方が「病院」で亡くなる方と比べて圧倒的に多い、と言われているが、「在宅死」イコール「自宅死」ではない。「自宅死」と「施設死」は大体半々であり、国によっては「施設死」の方が多いケースもある。
「施設」は昔の福祉の時代の「施設」をイメージしがちであるが、介護保険制度以降の「施設」は様変わりしている。民間企業を中心とした努力により、単に「行き場所がない高齢者」が住む場、ではなく、家族ではない人たちと気兼ねなく暮らす「終の住処」として相応しい場が整備されている。「施設」という呼び方が、今では実状に合わないという指摘もあり、「ホーム」と呼んだほうが良いとの指摘もあるが、いずれにしても「施設」(ホーム)は今後の高齢者の生活を考える上で、非常に重要な要素である。
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