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Profile
株式会社メディヴァ
代表取締役 大石佳能子
大阪府箕面市出身。 幼少時代をニューヨークで過ごす。 大阪大学法学部卒業。 ハーバードMBA。 マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーを経て、(株)メディヴァを創業。 マッキンゼーではマーケティングと小売業、ヘルスケア部門を担当。 消費者視点での商品・サービスづくりを数多く立ち上げる。 著書に「消費者最優先企業の時代」(共著)、マッキンゼー・クオタリーにマーケティング、ヘルスケア関係の論文多数。 厚生労働省「これからの医業経営の在り方に関する検討会」、厚生労働省「社会保障審議会福祉部会」、日本経済調査会「これからの医療の在り方に関する検討会(大星委員会)」委員。
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医療経済を斬る メディヴァ代表 大石佳能子による連載コラム
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予防市場の制度化(2)

 前回、平成20年度から健康保険組合が全組合員に対して、健康診断を実施し、「メトボリックシンドローム」およびその予備群へ保健指導を実施することが義務づけられた旨をご説明した。対象者総計では1960万人と推定され、義務化によって新しく生じる市場は1兆円と推計されている。

 今回は、過去の厚生労働省の取組みとは異なり、明確な実施目標と罰則規定が定められた。例えば単一健保の場合、平成24年度における実施目標値は健康診断が80%、保健指導が45%とかなり高くなっており、実施成果としてメタボリックシンドロームの対象者と予備群を10%削減することが求められている。この目標達成度合いによって、今後の拠出金額が異なり、健保の財政に大きな影響を与え得る。

 この健康診断受診80%、保健指導実施45%という実施目標は到達し得るものなのだろうか?「病気が見つかるのが怖いから、健康診断は受けたくない」という人や、子育中の主婦等で家から出られない人もいるだろう。この人たちを捕まえて、健康診断を受診させること、保健指導を実施することは至難の業と思われる。

 では、どうやって目標値を達成すればいいのだろうか?厚生労働省は、平成19年度中に各健康保険組合にこれを考え、目標達成までの計画策定を行うよう指示している。また計画を単に絵に描いた餅にしないように、実行に移す際の予算立てと組織体制を明記することとした。この計画書は年度末には、各都道府県に提出することとなっており、例えば保健指導の予算を全く積んでないとか、今回の取組みの趣旨に合わない計画が提示された場合は、指導対象となる。

 弊社では、この目標達成に悩む多くの健康保険組合より相談を受け、一部のところに関しては計画書や体制作りの支援・コンサルティングを実施している。
その一環として、前回書かせて頂いた「アンケート」を初めとした各種調査も実施しているが、その中で確信するのは、「80%、45%」は高い目標値であるが、けして達成不可能なものではないということである。

 目標達成に向けた、具体的な方法をご説明しよう。まず健康診断であるが、「被保険者(従業員本人)」と「被扶養者(家族)」に分けてみた。「被保険者(従業員本人)」は原則的に、勤め先で労働安全衛生法上に定められた法定健康診断を受けている。今回義務化された「特定健診」と、会社の「法定健診」は項目が異なるが、同一化すべく調整が進んでいる。一方、今回の義務化対象者は40歳以上の人だけなので、殆どの健保では、「被保険者(従業員本人)」と「被扶養者(家族)」の割合は、「被保険者(従業員本人)」のほうが多い。このため、仮に「被保険者(従業員本人)」対「被扶養者(家族)」の数が1対1であった場合も、「被保険者(従業員本人)」が100%受診していれば、「被扶養者(家族)」は60%受診すれば80%は達成出来る。

 一方「被扶養者(家族)」のほうは、ある健保の例では、20%程度が健保組合の昔から実施していた人間ドック等の補助金事業等で、健康診断を受診している。またアンケート調査の結果を分析すると、30%程度が「他所で受診」していることが分かった。これは、「被扶養者(家族)」もパートで働いている先で「法定健診」を受けていたり、自治体健診を受けていたりするからである。このように見てみると、「被扶養者(家族)」の10%程度の受診率が上がれば、目標値は達成される。

 このため、健康診断受診目標達成のための優先的な課題は、「健康診断を受けたくない」と思っている人を無理やり受けさせることではなく、今まで人間ドックを受診している人に継続的に受けてもらうことや、他所で受診している人のデータを確実にもらうことである。「特定健診」の場合は、癌の発見を目的としたものではないため、健診自体の効果が疑われがちである。このため、過去に健康診断を受診している人に、受診モチベーションを維持してもらうには工夫が必要となる。

 一方、保健指導はどうだろう。同じく対象者を「被保険者(従業員本人)」と「被扶養者(家族)」の課題に分解してみた。「被保険者(従業員本人)」と「被扶養者(家族)」が同数居た場合、仮に「被害保険者(従業員本人)」に対する保健指導を徹底した場合、50%の実施率が実現できることなる。

 これに加えて、「メタボリックシンドロームは実は、男性の問題である」、という事実がある。男性は2人に一人、女性は5人に一人が基準に引っかかるとされている。殆どの健保の場合、「被害保険者(従業員本人)」は男性であるため、「被害保険者(従業員本人)」に徹底的に保健指導を行えば、80%近い実施率を実現することができる。

 では、「被扶養者(家族)」はどう扱えばいいのであろうか?これは何もしなくてもいい、のではなく、「指導の機会」を提供することが重要である。例えば事業所での保健指導に参加するよう呼びかけるであるとか、健康診断を受けた機関で保健指導を受けられるよう手配することだとか、である。また、当社が実際保健指導をやっている中で気がついたのは、「夫婦メタボ」が多いことである。家族は生活習慣が似ているので、メタボになる場合も夫婦が揃ってなるケースが多いのではないか、と推測される。この場合は、奥様には「旦那様の食事指導を行うので、一緒に来て下さい」と誘いを掛ける。これは奥様にとっては「あなたはメタボなので、指導を受けに来て下さい」というより遥かに指導に行き易い環境となる。

 いずれにしても、保健指導の場合も、優先的な課題は、子育で忙しくて、保健指導を受けに行けないという層を、自宅まで訪問して指導を行うことではない。そのようなことをすると効率が悪く、保健指導費用がいくらあっても足らない。また、そのような対象者に対して、無理にネットや電話を通して効果が期待しにくい保健指導を実施することではない。優先的な課題は、企業側と連携して従業員が保健指導を受け易いような環境を整備することである。
 実際、昨今の少子高齢化を背景に、定年が延長になり、企業も今まで以上に従業員の健康に力を入れざるを得なくなっている。「60歳以上」セグメントと「60未満セグメント」の比較を行うと、前者は後者の5倍病気をするため、従業員の健康は企業にとっても大変重要な課題となってきている。「被保険者(従業員)」の保健指導に力を入れることは、単に健保組合に課せられた目標を達成するためだでなく、企業の生産性を向上させるという重要な課題に対する答えを提供しているのである。

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