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★ 少子高齢化社会の多様な暮らしを支えるコミュニティ資源としての「注目」医療サービス
本地川醫院(大阪市)、スパイナルケア(世田谷区)
<もとちがわ本地川醫院>
「日本の医療は『痛み』に対して冷たい」と本地川醫院の本地川院長は語る。「『痛み』があっても生死に関わる疾患がないと分かったとたん、『痛みで死ぬことはない』と言う。『痛み』を取ることに真面目に対応しているのは歯医者さんぐらいだろうか。」大阪市北区の扇町メディカルモールにある同クリニックは、椎間板ヘルニアのレーザー治療を専門とし、腰痛等脊椎の「痛み」を取り除く。
椎間板ヘルニアとは、積み木のように重なった脊椎の骨の間にある円盤状のクッション(椎間板)が突出して、傍を通っている神経を圧迫している状態である。腰痛、足のしびれ、痛みなどの原因となるが、治す方法は外科手術で椎間板を取り除くか、薬やリハビリで症状を緩和させる方法しかなかった。外科手術は背中を開け、骨や神経を切ってヘルニアを除去する。完治する確率は高いが、長期の入院を含め患者さんには負担を強いる。薬やリハビリは温存療法であり、身体への負担は少ないものの完治は難しい。
これに対して、本地川醫院では、PLDD法という治療を行っている。これはレーザーを使い、椎間板の中心にある「髄核」を蒸散させることにより量を減少させ、突出部分を戻す治療である。レーザーを内蔵した鍼を患部に刺すだけで患者への負担が低く、副作用も少なく、根治が可能である。ただ、対象となるのは、椎間板ヘルニアの患者さんの約7割であり、残りの3割は髄核の周りの「繊維輪」が固いため、中身を減らしても「繊維輪」が縮まず、突出部分は戻らない。どの患者にPLDD法が効くかは事前の検査では判定が難しく、実際やってみないと分からないのが、この治療法の難しさではある。
この治療方法は、元々大学で考えられたものであるが、民間医療機関での営利的な導入が先行したことと、レーザーという先進技術のもつイメージが一人歩きし、有効性と無香性が公平に論じられることがなかったため、アカデミアのなかでは懐疑的な見解が広がった。このためか、PLDD法は保険が適用されず、治療費は全額自費となる。本地川醫院で治療を受けた場合、治療費は35万円である。
アカデミアでは認められにくく、保険適用もされず、7割の患者さんしか治療対象でないにも関わらず、本地川院長がPLDD法を行う理由は、「患者さんの『痛み』を取って上げたい」という気持ちと「薬やリハビリが気軽に乗れる『地下鉄』だとして、外科手術が『国際線のジェット』だとすると、患者さんに気軽に乗れる『新幹線』や『急行列車』を選択する機会を与えたい」という思いである。「日本の医療保険制度は素晴らしい制度だと思う。しかし、医療保険制度だけで必要にして十分だという考え方には疑問を感じる。治療方法には色々な種類があり、患者さんには選択権があるべき。」
本地川院長は椎間板ヘルニア治療の「新幹線」であるPLDD法に加え、新たな「急行列車」を検討している。DRX9000という米国産の椎間板減圧治療機で、特定の椎間板に狙いを定めて、力をコントロールしながら牽引し、減圧を図る。米国では約500台が稼働しているが、日本の稼働台数はまだ6台に過ぎない。DRX9000で牽引した結果治療効果が認められた患者さんは、繊維輪の弾性があるためレーザー治療で成功する確率が高い、と先生は考えている。牽引は一回7000円で30分づつの治療を10数回実施する。牽引の治療効果が判明すれば「将来的にはレーザーや他の治療法を代替するかもしれない」そうだ。
「目指しているのは、サービス業としての医療。もうちょっとお金を出しても良いな、と思うような医療を目指したい。治るための代償として難行苦行をしなくても良く、むしろ楽して治る医療」ということであった。
<スパイナルケア桜新町>
スパイナルケア桜新町は、カイロプラクティックという手法で背中の「痛み」をとる。カイロプラクティックは100年以上の歴史を持ち、世界70カ国で国家資格が法制化されて、医療の第一段階として認められている。しかしながら日本の場合、法制化はされておらず、免許制度もないため、誰でも簡単にカイロプラクティックの治療院が開設でき、結果として患者さんの不信感を招いてしまった。「カイロ」を標榜している治療院が全国で約1万箇所あるのに対し、海外もしくは国内でカイロプラクティックの学位をとっている施術者は500人に過ぎない。
スパイナルケア桜新町は、国際基準の学位を取得した者のみが施術を行い、レントゲンなどの画像診断が必要な場合や、カイロプラクティック適応外の症状と考えられる場合は、医療機関と連携もしている。カイロを一つの「選択肢」として患者さんに提示しながら、他の「選択肢」も提供し、「抱え込まない」ことが理念である。
カイロプラクティックは、背骨を治療し、身体全体のバランスを整える手法で、薬や手術に頼らず、背骨の動きを改善させることにより、神経や筋肉の動きを正常にする。腰が痛い、ぎっくり腰、首の痛み、四十肩・五十肩、寝違い等、様々な「痛み」に対応している。
同治療院の柴田院長によると「カイロプラクターは『背骨の関節を‘手’で治療し、神経・筋・骨格のはたらきを整える専門職』です。からだを動かすすべての神経は背骨を通っています。ですから背骨の動きが悪くなると、神経のはたらきが滞り、体のバランスを崩してしまいます。働きの悪い部位が他の部位に負担をかける。会社で例えるならば、様々な人々が役割を果たして成り立っている会社が、誰かが休むことで、その負担が他のヒトに掛かる。これと同じことが背骨を中心とした体でも生じるのです。ですからカイロプラクターは背骨を調整して、関節や筋肉の状態だけでなく、神経の働きも整えているのです。」
スパイナルケア桜新町では、カイロプラクティックに関するマイナスなイメージを払拭するために、あえて「カイロプラクティック」という名前を使わず、「スパイナルケア」(スパイナル=背骨、のケア)という名称を考案したという。同治療院を訪れると、まず最初にカイロプラクティックに関するビデオを見ることから始まり、治療方針・内容についてはかなり細かく説明して患者さんの納得を得る「インフォームド・コンセント」のプロセスを重視している。
非常に科学性を前面に打ち出した理屈っぽさがありながら、一方で極めてソフトな雰囲気作りも行なっており、バリのリゾートを思い出させる内装となっている。室内を流れる小さな滝の音を聞きながら、東南アジアのハーブティを飲んでリラックスした雰囲気のなかで治療は進む。本地川院長と同様、「サービス業としての医療」を目指している姿勢を感じさせられた。
治療の質が担保されていることが大前提ではあるが、「保険以外にも選択肢」が多く、「患者さんにとっての選ぶ自由」が大きいことは、患者さんにとっては有り難いことではないだろうか。
★掲載 月間シニアビジネスマーケット2006年7月号
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