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予測患者数やクリニックコンセプト、立地条件などの情報を取りまとめ、全体
として成り立ちうる事業計画となるかどうかを見極めるためには、「事業シミ
ュレーション」を行うことが重要となります。そこで、前回と今回に分けて
「事業シミュレーション」を構成する各要素についてお話してきました。
1.シミュレーション
(1)投資計画書
(2)損益計算書(P/L)
(3)貸借対照表(B/S)
(4)キャッシュフロー収支
(5)資金調達と返済計画書
(6)減価償却費計算書
前回は(1)~(3)についてお話させて頂きました。今回は(4)キャッシュフロー
収支、(5)資金調達と返済計画書、(6)減価償却費計画書についてお話しし、最
後にこれら(1)~(6)の各書類の相互関係を説明いたします。
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(4)キャッシュフロー収支:現金の流れ
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キャッシュフロー収支という言葉よりも、資金繰り表という言葉の方がよいか
もしれません。一定期間において、どれだけの現金の入と出があったかを示す
帳票になります。ぱっと考えると、現金の入=売上、現金の出=費用とイメー
ジされるかもしれませんが、それは誤りです。実は、次のような構造になって
います。
・現金の入
-売上のうち入金されたお金(窓口収入、前々月の診療報酬など)
-借り入れることで手に入れたお金(借入金、買掛金)
-減価償却費(帳簿上は費用ですが、実は現金は手元に残ります)
・現金の出
-費用のうち支払ったお金(支払った請求書や給与など)
-貸し付けているお金(売掛金、診療報酬のレセプト請求分)
混乱するかもしれませんが、よく考えれば単純なことで、物を買っていてもお
金を支払っていなければお金は借り入れたのと同じで手元に残りますし、逆に
レセプト報酬などは2ヶ月先にならないと入金されません。
このキャッシュフロー収支は非常に重要な帳票です。なぜならば、手元にお金
が残っているかどうかがわかる帳票であり、もしも数ヶ月先にお金がなくなる
と支払が滞り倒産という目にあってしまいます。時々、“黒字倒産”という言
葉が聞かれることがありますが、これは儲かっているのに現金がなくなる=帳
簿上の売上はあるけれど入金がなく支払が滞るという事態です。
医療界では、レセプト請求については、遅くともほぼ95%が2ヶ月後に振り込ま
れるため、黒字倒産という憂き目にあうことは少ないですが、時々、一時的に
費用が必要な時期(賞与など)を支払う結果、資金繰りに困ることがあります。
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(5)資金調達と返済計画書:
自己資金と金融機関融資、リースによって資金調達を行います。
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リースはそのまま経費処理されるため、損益計算書のみに表示されますが、自
己資金とリースでまかなえない初期費用は金融機関融資によって調達すること
となります。融資で得た資金は、金利、返済猶予期間、返済期間、返済方法
(元金均等、元利均等)により月々の返済額がきまります。一般的には、1年据
え置き、7-10年返済、変動金利2.5-3.5%、元利金等返済というのが標準の条
件のようです。資金調達の調達元ですが、一般的には次のところが候補として
考えられます。
─ 独立行政法人福祉医療機構
:公的融資で金利も安いが、地域が限定される
─ 国民生活金融公庫
:公的金融機関。金利は安いが融資額が小さい
─ 医師信用組合
:都道府県ごとに医師会と協調した融資。有効だが地域限定
─ 都市銀行・地方銀行
:一般的に金利が高めだが、一部地方銀行ではとても良い条件を出して
もらえることがある。また、都市銀行も最近は力を入れ始めている
─ 信用金庫・信用組合
:金融機関への融資自体に慣れていないところが多いが、うまく話しを
もっていけると安くて使い勝手が良いことが多い
* 開業資金の調達については下記もご参考ください(編)
▼ メディヴァ・メールマガジンNo.002~003
「自己資金が少ないからと開業をあきらめていませんか?」
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(6)減価償却費計算書:
リース以外で購入した資産(建物、医療機関、土地除く)には減価償却費が
定められています。
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減価償却費とは、その資産が劣化する分を経費として認め現金を残し、資産が
十分劣化したときにはちょうど現金が当初の資産価格と同じだけ残っており、
再投資も可能ということを前提に作られている制度です。そのため、上手に使
えばかなり有用なのですが、問題もあります。
まずは、毎年の減価償却費用は法定で限度が決められてしまっており、一定額
以上は経費に計上できないことです。しかもその額は、利用者が実際に資産が
劣化したと感じる分よりも小さく設定されていることが多く、ある程度事業が
軌道にのってきたところで再投資したいと思っても、十分な現金も残っておら
ず、また資産も帳簿上に残ってしまっていることがあります。
もう一つは経営の問題なのですが、減価償却という概念を正しく理解していな
いと、実は残すべき現金が残っていないということがよくおきます。特に個人
経営で管理をしていると、ついつい預金通帳だけでお金を使ったり、支払いの
良し悪しを判断してしまい、本来なら将来の投資用にとっておくべき減価償却
に対応する現金が、使ってよいお金に見えてしまうのです。結果、20年たって
古びた施設をリニューアルしたくても先立つものがないということが起きてし
まうことがあります。
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◆ 事業シミュレーションに重要な各構成要素の相互関係
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まずは(1)投資計画書を作り、そこから(5)資金調達と返済計画書、(6)減価償
却費計算書を起こした上で、必要な項目(リース料、減価償却費、金利等)を用
いて、(2)損益計算書を作成するのが一般的な流れになります。
以上を、この場のみでご説明するのは難しいのですが、こうしたお金の相互関
係を眺めてみると、事業におけるお金の構造化が可能となり、より実現性の高
いシミュレーションを構築できる可能性が高まります。
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(1)投資計画書
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↓ ↓ ↓融資額
↓ ↓ ─────────────
↓ ↓ (5)資金調達と返済計画書
↓ ↓ ─────────────
↓ ↓資産額 ↓
↓ ───────────── ↓
↓ (6)減価償却費計算書 ↓
↓ ───────────── ↓
↓ ↓減価償却費 ↓金利、元本返済
↓リース料 ↓ ↓
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(2)損益計算書(P/L)
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↓ (+) 減価償却費、税引き後利益、買掛金
↓ (-) 元本返済、売掛金
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(4)キャッシュフロー収支
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(1)投資計画書 (2)損益計算書(P/L)
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↓ ↓減価償却による現金増加、資産劣化
↓資産、資金、負債 ↓税引き後利益-元本返済による繰越金
↓ ↓売掛金、買掛金の出入り
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(3)貸借対照表(B/S)
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業者や金融機関が作成する帳票だけではなく、ご自分の手でそれぞれの帳票を
作成し、相互の関連性を理解して頂けると良い経営に繋がるのではないでしょ
うか。医療そのものには関係が無いようにも見えますが、医療機関経営にあた
っての「肝」であること、また事業成功の鍵であることをご理解いただけたら
と思います。
( 取締役・コンサルティング事業担当 小松大介 )
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