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- メディヴァ メールマガジン No.006(2005/09/28)
メディヴァ・コラム < 有床診療所の役割は終わったか? >

先日、筆者は神戸市の下町にある有床診療所「はやしやまクリニック(希望
の家)」を訪問させて頂きました。同クリニックはグループホームとデイサー
ビスを併設した19床の有床診療所で、コンセプトは「ホスピス」です。
母体となる「はやしやまクリニック」を13年前に開業した梁先生は、積極的
に在宅医療、特に在宅ホスピスに取り組んで来られました。しかし、在宅で看
取りまで行うには、痛みによる本人の限界、疲れによる家族の限界があります。
「有床診療所でホスピスを」は、「最期まで在宅で」が無理でも、「できる限
りそれに近い形で」と考えた結果のコンセプトだそうです。

はやしやまクリニック(希望の家)は病床部分が19床、うち個室が9床です。
施設は梁先生の考え方が上手に反映されていて、非常に落ち着いた、居心地の
良い雰囲気に仕上がっていました。筆者が訪れたのは開業後約1年でしたが、
廊下の端の大きな窓の横には鈴虫が鳴く虫かごが置かれる一方、病室に必要な
清潔感は十分保たれていて、病室でもなく家庭でもない、程よい生活感のある
空間となっていました。窓の大きな食堂、図書室、家族室(茶室にもなる)、
大風呂のほかに家族風呂、病室の間接照明等、随所に細かい気遣いが見られま
した。

有床診療所はホスピスベッドが16床、メディカルショートステイ(在宅患者
の一時預かり)ベッドが3床あります。一部のベッドは緊急時対応のために空
けて置かなくてはいけないため、平均稼動ベッドは15床だそうです。ホスピス
ベッドはほぼ満床でした。入院経路は、同クリニックの在宅患者だけでなく、
周辺病院からの紹介やホームページからの問合せも多いそうです。
差額ベッドは1万円に設定されていますが特に抵抗感はなく、もう少し高く
ても問題はなかったのではないか、というのが梁先生のコメントでした。一部
のガン保険は「緩和ケア病棟に入った場合、ベッド代は払わない」のですが、
有床診療所だと法的には「緩和ケア病棟」とならないため支払がされるそうで
す。このため、患者負担は更に軽減されます。

一方、有床診療所側の収支を見ると、診療報酬が極めて低く設定されていて、
病床単価は病院の半分以下となります。病院に存在する緩和ケア病棟の基準も
点数も有床診療所には適用されません。平均病床単価が8000円程度(差額を除
く)であるなかで、同クリニックの収支は厳しく、有床診療所部分が大きく赤
字だそうです。同クリニックの場合は、その赤字を経費削減と在宅・外来患者
の増加で補う戦略を立てて活動を開始していました。

経営的に成りたせることさえ可能であれば、患者・入居者の満足度は極めて
高く、地域の中で果たす役割も大きいのではないでしょうか。特に重要なポイ
ントは、同クリニックが地域病院からの紹介が多く、地域連携のなかで不可欠
なクリニックとして位置付けられていることです。地域医療機関との連携は、
「ギブ・アンド・テイク」を基本とし、はやしやまクリニック(希望の家)の
場合は、地域病院からホスピス患者や在宅患者を受け入れ、代わりに必要時に
地域病院に患者を預け、「ギブ・アンド・テイク」のサイクルを上手に回して
いるものと思われます。

また患者ニーズの観点で見ると、統計的に「自宅で亡くなりたい」人が70%
を占めるにも関わらず、「病院で亡くなる人」が70%を越えています。その理
由の一つは、自宅死を支える医療サービスが少ないからですが、有床診療所は
患者のニーズに合った小回りの効く医療サービス提供が可能で、家庭と病院の
中間のサービスを提供できるのではないか、と思いました。現在、有床診療所
は経営的にも厳しく設定され、徐々に閉鎖されていく方向ですが、有床診療所
におけるホスピス機能は、見直されてもいいのではないかと思っています。

実は弊社が支援している医療法人でも、有床診療所の開設を計画しています。
場所は世田谷区で、長年地域の病院で勤めていた外科の先生が院長となり、近
隣の開放型病床を持つ病院で手術を行い、退院後を在宅で看て、必要な場合は
有床診療所での看取りをするという、シームレスで多面的な付き合いを患者さ
んとできるような仕掛けを検討中です。開業は今年度末を計画していますが、
また内容・成果についてご報告できる機会があれば幸いです。
同時に、有床診療所における医療体制と診療報酬のあり方についても実体験
を交えて、考え方をまとめてみたいと思います。現在、有床診療所は、果たす
べき役割が曖昧であること、医療提供体制が病院に比べて緩やかであること
(夜間の医師配置が義務つけられていない等)、から機能も診療報酬も限定さ
れています。入院期間は原則48時間を超えてはならない旨(医療法13条)が定
められていますし、診療報酬も低く抑えられています。しかしながら、機能が
明確であり、医療提供体制も整備されている場合は、地域で果たすべき有用な
役割があり、診療報酬もそれに応じて上げても良いのではないか、と考えてい
ます。もちろん従来型の有床診療所もあってしかるべきで、どちらを選ぶかは
各医療機関に任せれば良いのではないか、と思いますが、いかがでしょうか?

( 代表取締役 大石佳能子 )


◆ はやしやまクリニック(希望の家)
  http://www.wataboushi.net/kibounoie/

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