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- メディヴァ メールマガジン No.005(2005/07/14)
連載開業プロセスと成功するポイント 第5回 < 市場調査と患者数見込み >

今回は、ある程度の場所や候補となる物件が決まった段階で、その場所でどれ
くらいの患者数が見込めるのとかいった視点から、よりミクロな市場調査を行
うプロセスについて説明させていただきます。


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◆ (1) 見込み患者数
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患者数を見込む上で最も基本的なデータは厚生労働省が3年に1回実施している
「患者調査」に基づく”受療率”という指標です。これは全国の都道府県別、病
院・診療所別に入院と外来のそれぞれについて、疾病小分類ごとの患者数をア
ンケートで収集したデータになります。ただし、調査は10月のある1日におけ
る患者数に限定されていますし、また疾病分類は厚生労働省の統計に対して、
ドクターがアンケートで答えるという形式になるため、本来的な患者数そのも
のを表せているわけではありません。しかしながらこのデータ以上に網羅的に
患者数を推定できるデータは無いため、まずはこの情報をもとに市場調査を開
始します。

具体的には受療率を次のような計算式で利用し患者数を推定します。ただし、
物件周辺人口、受療率については、もう少し絞込みが必要です。

患者数 = (1) 物件周辺人口 × (2) 受療率

(1) 物件周辺人口:
物件によって、患者さんが来ることが見込まれるエリアは全く異なります。一
般的には、都心で半径500m-1km、郊外で2km-5km、地域によっては半径10kmく
らいは車で十分に通院範囲となる場合もあります(弊社調べでは、都心のクリ
ニックですと、半径500mで8割の患者を占めます)。 また、河川や大きな幹線
道路、鉄道などがあると人の流れは変わり、通院可能なエリアの形も変わって
きます。これを明確に把握するためには、物件周辺を歩いたり地元住民の話を
聞く必要があります

(2) 受療率:
受療率で最も重要なのは、先生によって「専門となる疾病」、「診ることはで
きる疾病」、「全く対象とならない疾病」があることです。簡単に診療科目別
に考えることも可能ですが、受療率の疾病小分類をよく見ると、消化器内科や
整形外科といった診療科目と必ずしも一致しないことがわかります。先生自身
が疾病小分類までよく見て、その上で対象となる疾病を選択することが重要に
なります。

これらによって、まずは最も基本的な、物件周辺における患者数の見込みがわ
かります。しかし患者数の見込みはあくまで地域全体での見込みとなりますの
で、地域における医療事情(競合となる医療機関)によって、そのうちのどれだ
けのシェアが取れるのかが変わります。そのため、以下に続く調査を行い最終
的な患者数の見込みを算定します。

(参考) 患者調査が掲載されている厚生労働省HP
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/IPPAN/ipcart/scm_k_Ichiran


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◆ (2) 競合調査
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受療率による患者数予測に続いて重要な分析は、対象物件周辺の競合医療機関
の調査です。競合医療機関のリストだけであれば、地域の医師会や行政または
医療機関紹介のHP(東京都のひまわり)などで入手が可能です。またそこに掲載
されている診療科目などから、大体の医療機関ごとの特徴はわかります。しか
し、これだけでは十分ではありません。重要なのは地域において“本当に”競
合となる医療機関を探し、あるいは既にほとんど診療を閉じているような医療
機関を見極めることです。

そのための情報収集には、次のような手が考えられます。
(1)医薬品卸やMRへのヒアリング
地域をまわっている営業マンは、大体の活動状況を把握しています。直接的な
外来患者数を聞き出すなどは難しいですが、大体の流行状況などは教えてもら
えることもあります。

(2) 調剤薬局、地域住民へのヒアリング:
先生が直接聞き出すのは結構難しいです。ご家族や医療と関係のない友人、業
者などに頼み、「このあたりで内科の良いところありませんか?」などと聞き
歩いてもらうといろいろとわかることがあります。なかなか心理的な抵抗感の
高い調査ではありますが、地域の生の情報がわかる貴重なやり方ではあります。

(3)名前から推測:
診療所には“医院”と“診療所”、“クリニック”という名前が使われている
ことが多いです。実は、“医院”という名称は約30年ほど前まで行政指導でも
使われていた一般的な呼び名で、ここ10-20年はほとんど新規の医療機関では使
われておりません。そのため、“医院”とつくところでは、開店休業のような
状況になっているところもかなりあるようです。(代替わりなどで逆に流行って
いることもありますので、あくまで類推になります)

これらを用いて競合の状況が把握できれば、全体の患者数見込みに対して、そ
れぞれの診療所でどの程度患者数を確保していて、新しい医療機関でどの程度
見込めそうかが、おのずと見えてくるものです。


(参考) 東京都 医療機関案内サービス 「ひまわり」
http://www.himawari.metro.tokyo.jp/qq/qq13tomnlt.asp


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◆ (3) とはいえ、、、
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ここまで、見込み患者数と競合調査の話をしてきました。しかし、これで本当
に科学的に患者数の予測がたつのでしょうか。いえ、実際にはこれらの予測は
あくまで目安にしかなりません。

まず私どもの経験では、重要なのは全体の見込み患者数であって、競合情報で
はありません。患者数さえその地域に一定数見込めれば、あとは競合との競争
になり、「シェアの競争 = 差別化の競争」によって、より多くの患者数を確
保することも可能だからです。そのため、もともと患者数の見込が圧倒的に少
ないエリアでは、まず開業をお薦めすることはありません。
また、シェアの競争という形が見えてくれば、地域で本当に競争相手となる医
療機関の数は2-3軒に限られることも多いため、個別の対策を立てることが可
能です。競合となりうる医療機関のやり方や得意分野、検査設備などを見極め、
それらと直接競合にならないようなやり方や、同じ競合でもよりレベルの高い
医療を目指すといったことが可能となります。

現在、既に全国平均では開業医の数は過剰になりつつありますので、今後はい
かに差別化をはかるか、競争力の高い医療サービスを構築するかが重要です。
そうした目線で見れば、いずれの先生方にも患者数を確保できる可能性がある
一方で、開業後も間断なく地域での競争に巻き込まれていくことはやむを得な
い状況になります。開業にあたっては、場所と同時にコンセプトやサービス内
容について、より一層の検討と作りこみが求められることになっていくと思わ
れます。

次回は、“シミュレーションと資金調達”です。

( 取締役 コンサルティング事業担当 小松大介 )


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┃▼┃クリニックにおける職員採用について
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

社会人になってから現在まで15年ほど、常になんらかの形で人材採用に関わ
ってきています。ここ3年間は医療機関、特にクリニックの職員採用業務を請
け負い、月に平均2-30人の面接を行い、毎月必ず数名を採用してきています。
その経験のなかで、診療所における職員採用について感じ考えたことについて
書いてみたいと思います。

診療所での職員採用で最も感じることは、採用人数が少なくリスクが非常に
高いということです。企業の場合、数十名、数百名という採用人数の中で平均
的な人材のレベルが議論され、その後の教育や競争という中で人を育てていく
というのが通常の形ですが、クリニックでは一つの職種の採用人数は1名か2名
という場合がほとんどです。したがってその採用の成否によってクリニックの
内容が180度変わってしまうほどのインパクトがあります。

例えば、立地、職種、条件などによっては1名の募集に対して50名ほどの応
募がある場合もありますが、書類選考、面接で仮に5人に絞り込むことができ
たとしても、最後には1名に決めなければならず、このときに最後の選考を間
違えてしまうと、いくら候補者がたくさんいてもそれまでのプロセスはすべ
て無駄になってしまうわけです。

そんななかで、クリニックの将来をともに創り上げてくれるような、熱心で
創造性と柔軟性に富み、かつ業務を確実にこなしてくれるような職員を採用す
るにはどうすればよいのでしょうか。

そのためには、大項目として
◆ (1)まず、必要とする人に応募をしてきてもらうこと、
◆ (2)そして応募者のなかから採用すべき人を見極めること
◆ (3)最後に、こちらからオファーを出した人に来て貰うこと

の3点が必須ですが、それぞれに順を追って考えてみたいと思います。

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◆ (1) 必要とする人に応募をしてきてもらうこと
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広告媒体の選択や募集条件の設定を適切に行うことはもちろん重要ですが、今
回強調したいのは、良い人材から募集側(クリニック)が選ばれるという視点
を持つことです。

募集を出すときには、つい、こちらの欲しい自在のスペックや勤務条件など、
こちら側の視点から考えがちですが、応募する側は多くの求人の中から、各人
の基準を持って選択を行っていることを意識する必要があると思います。

応募者が求人を選ぶ基準は、業務内容、通勤、勤務の曜日や時間帯、給与など
が基本的なものですが、クリニックの核となってくれるような人材が最も重視
するのは、よりソフトな側面です。つまり、この職場で何を学べるのか、どう
いう体験ができるのか、どのように自分の力を発揮でき、どのようなやりがい
のある仕事なのか、どのような上司、同僚と働くことができるのかといったと
ころです。

そのため、募集に際しては、まずクリニックの理念や内容を明確に定め、これ
らが的確に候補者に伝わることが重要となります。これまでの経験で最も有効
なのは、あらかじめホームページに出来る限り分かりやすくクリニックの目指
すものや内容についての情報を用意しておき、広告にURLを載せてホームペー
ジに誘導し、その内容を読んでもらうようにすることです。実感としては、こ
れを実践するかどうかで、欲しい人材が応募してきてくれる可能性が数倍は
違ってきます。


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◆ (2) 応募者のなかから採用すべき人を見極めること
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経験、スキル、人柄、潜在能力などいくつもの基準が有り得ますし、選考者そ
れぞれに人材観や見極め方法があると思いますが、一つだけ共通して重要だと
思うことがあります。それは、“その人がこちらの思ったとおりの役割で力を
発揮してくれている姿が想像できるか”ということです。

選考時に陥りやすい間違いは「だれが一番能力が高いか」という一元的な観点
で選考を進めることだと思います。このときの「能力」というのは一言で言え
ば学校で良い成績をとる能力というようなイメージですが、一番「能力」が高
い人が必ずしも最も成果を出してくれるとは限りません。

“こちらの思ったとおりの役割で力を発揮する姿が想像できるか”を見るため
には、まず「こちらの思う役割」をイメージする必要があります。

たとえば、
・未知の状況でも粘り強く解決策を見出して欲しい
・きちんと確実に業務をこなして欲しい
・職場のムードメーカーになって欲しい
・組織を引っ張っていくリーダーシップを発揮して欲しい 等々

より具体的にイメージを定義し、そのイメージをさらに具体的な場面に落とし
込み、そのような人材は「このような場面ではどう行動して欲しいのか」をよ
く考えておくことにより見極めの精度を上げることができます。

さらに、“思ったとおりの役割で力を発揮する姿が想像できるか”を見極める
ため、過去にどのような場面で、どのような選択を行ったのか、どのように行
動してきたのかを質問するようにしています。例えば「一番きつかったことは
どんなときで、そのときにどのように対処しましたか?」「これまでに一番打
ち込んだことは何ですか?」といった質問をスタートにして話を聞き、その候
補者の方についてより理解を深めます。


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◆ (3) こちらからオファーを出した人に来て貰うこと
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採用すべき人が応募してきてくれて、ようやくその人を見極めたとしても、そ
のような人は、どこからも内定を取ることが出来る場合が多く、その候補者に
再度、わがクリニックを選んでもらう必要があります。そのためには、さきほ
どホームページで書いた内容についてより深く理解していただくことが重要だ
と思っています。多くの採用において、”その理念を本当に実現していくため
に”その人が必要である、という場合だと思いますし、欲しい人材は、完成さ
れたものに当てはまるより、自分が参加して創り上げたいということが多いよ
うに思います。この場合には、その理念に対してどこまでが出来ているところ
で、これからどのような方向で力を発揮して欲しいか、ということを正直に話
すことが有効だと思っています。

また、候補者本人とこちらの求める役割や、力を発揮して欲しいポイントなど
をオープンに話し、意見を交換することにより、お互いにそのイメージが一致
したときに、候補者のほうにも「やってみたい」という気持ちが強く芽生える
ようです。

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以上のようなことを考えてみると、クリニックにとって職員を採用するという
活動は、自らの目指すものや価値観を定義し、それを広くコミュニケーション
し、応募者とそのイメージをすり合わせ共有していくプロセスということにな
るのではないでしょうか。このように考えると、それは「採用」という言葉か
ら感じる一方的で大雑把なニュアンスの活動ではなく、「これから何かを行っ
ていくための同志を募る」という、双方向で個人的なプロセスであるように思
います。
( 取締役 PPM事業担当 岩崎克治 )

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