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前回は、開業時の資金調達方法のいくつかの選択肢の中で、(A)国民生活金
融公庫からの借入と、(B)公的融資制度の利用について、ご説明させていただ
きました。どちらも金利は比較的安いですが、必要書類が多く審査に時間が
かかる(通常1ヶ月以上)のが特徴といえます。また、審査には事業計画はもち
ろんですが、自己資金や担保・保証人を非常に重視する傾向があるようです。
それでは、例えば自己資金が少なく、担保・保証人もあまり当てがない状況下
で、良い開業物件が急に見つかって急ぎで多額の保証金等の資金が必要になっ
た場合は、どうすればよいのでしょうか。今回は、例えばそのような場合に利
用の可能性のある(C)民間金融機関からの借入、(D)リース会社からの借入につ
いて概要、条件、特徴(メリット、デメリット)等をご説明したいと思います。
▼ (C) 民間金融機関からの借入
ひとくちに「民間金融機関からの借入」と言っても、世の中に民間金融機関
はたくさんあり、個々の金融機関によって開業資金融資への対応はまちまちで
す。大半の銀行では、開業資金融資も通常の個人事業貸付の中の単なる一種類
という位置づけが多いと思われますが、医療分野に力を入れている銀行では、
医療・福祉事業に融資を行う専門の部署を設けたり、開業医向けのローン商品
を作ったりしています。ここでは、それらの比較的医療分野に力を入れている
銀行の中で、これまで当社と何らかの形でコンタクトのある主な銀行の実例を
2つ具体的に取り上げてみましょう。
【 例1:地方銀行 A 】
本店に医療・福祉事業部という専門部署があり、病院、開業医向けローンを数
多く手がけています。専門部署だけあって、医療分野に関する知識も豊富で、
開業資金融資についても比較的積極的に話を聞いてくださいます。主な融資の
形態としては、
(1) 銀行プロパーの開業資金融資(金利は3%台~4%台)
(2) 保証協会と提携して取り扱っている保証つきの開業医向けローン商品
(金利は保証料含めて2%台)
があり、借入額や資金使途等によってある程度使い分けることができます。
借入条件には、金額に応じてある程度の自己資金、担保・保証人は必要とされ
ますが、融資申込みの際に提出する事業計画も、銀行なりの視点で細かく検証
され、その上で事業自体が実現性の高いものだと判断されれば、その他条件に
ついて多少は柔軟な対応が期待できます。審査期間については、上記(2)の保
証つきローンでなければ、早くて申し込みから約2週間程度で融資の可否の方
針が出ます。
【 例2:都市銀行 B 】
昨今、開業医向けローンに力を入れ、今年の春から医師開業ローン商品を積極
的に売り出しています(ただし、窓口支店によっては対応が異なる可能性があ
ります)。当社経由での具体的な実績はまだありませんが、「無担保・無保証
も可」、「設備資金で最大5000万円、運転資金で最大3000万円まで借入可能」
とのことで、こちらも事業計画重視の融資が期待できます。金利は借入期間に
もよりますが、2%台~5%台で、審査期間については、同じく2週間程度みてお
けばよいでしょう。
これら民間金融機関からの借入のメリット・デメリットをまとめてみます。
<メリット>
● 審査の期間が比較的短い
特に、保証協会を使わない融資の場合は、早ければ申し込みから2週間程
度で審査の結果が出るので、急ぎの資金が必要な場合には便利です。
● 比較的、事業計画を重視して審査が行われる
事業の実現性が高いと判断されれば、自己資金、担保・保証人に関しての
条件について、場合によっては柔軟な対応が期待できます。事業計画上で、
説得力をもって事業の実現性が高いことを示すことがより重要となってき
ます。
<デメリット>
◆ 金利は案件によるところが大きいが市場金利(プライムレート)+αとやや
高め
金利に関しては、通常、設備資金は長期プライムレート、運転資金は短期
プライムレートにプラスαの変動金利の場合が多いようです。基本的には、
銀行は融資のリスクを金利に反映させるため、プロジェクト毎に金利が設
定されます。そういう意味では、無担保・無保証での融資も可能性はあり
ますが、その場合は融資リスクが高いと見られ、金利が高く設定される可
能性があります。
(D)リース会社からの借入
最後にリース会社からの借入について簡単にご説明します。多くのリース会社
は本業のリース業のほかに、ローン(資金の貸付)も取扱っています。ローンの
概要と条件などは各リース会社によって異なりますが、おおよそ下記のように
なります。
(1) 融資限度額は個別案件による。無担保では通常1000万円程度まで。
(2) 借入期間は2年~7年程度とやや短め。
(3) 金利は4%前後~5%程度とやや高め。
(4) 審査は比較的柔軟で (事業計画重視)、審査期間も2~3週間と短め。
(5) 担保に関しては個別対応だが、診療報酬債権譲渡担保
(クリニックの銀行口座に振込まれる診療報酬をいったんリース会社が
預かり、月々の返済額を引いた金額を再度銀行口座に戻すという担保
契約)を依頼されるケースが多い。
融資金利が比較的高いため、「至急でキャッシュの必要があるが、自己資金が
あまりなく、担保・保証人もすぐには手立てができない」といった本当に困っ
た状態の時に最後の砦的に利用する手段という位置づけだと思われます。
下記にリース会社からの借入のメリット・デメリットをまとめてみます。
<メリット>
● 無担保・無保証で借り入れられる限度が比較的大きい
ただし、不動産などの担保が必要なくても、前述の診療報酬債権譲渡担保
を要求されるケースは多いと思われます。
● 審査の期間が比較的短い
通常、申し込みから2~3週間程度で審査の結果が出ます。
● 比較的、事業計画を重視して審査が行われる
事業の実現性が高いと判断されれば、自己資金、担保・保証人に関しての
条件について、場合によっては柔軟な対応が期待できます。
<デメリット>
◆ 金利が高い
金利は高めで、民間金融機関から借り入れるより概ね1%前後高いと考え
られます。
以上、これまで開業時の資金の調達について、金融機関が審査のときに見る主
なポイントから、実際の借入先の選択肢、また各々の借入の概要とメリット・
デメリットをご説明してきました。
開業資金の調達は、開業時にクリアすることの必要な大きな関門のひとつです。
実際に開業を決意されるとき、個々のドクターの方々が置かれる経済的な状況
はさまざまだと思われますので、ご自身の状況(自己資金、既存借入、担保・
保証人、開業で提供する医療の収益性)、ニーズに応じて、ぜひこれまでご説
明した内容を参考にされ、様々な借入方法をうまく使い分けていただければと
思います。
(コンサルタント 安宅 雅美)
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