|
自己資金が少ないから、、、」と開業をあきらめてはいませんか?
前項のように開業にかかる事業計画をしっかり立てることによって、開業の
ためにいくらの資金が必要になるかがわかってきます。開業場所や標榜科目
にもよりますが、一般に医師一人体制で独立開業を考える際、開業に必要な
資金は物件賃貸の場合で4000~7000万円と言われています。土地、建物を購
入する場合は、さらにその分あらかじめ資金を用意する必要が出てきますの
で大きな初期投資となります。通常、いくらドクターとはいえ、全額これを
自己資金でまかなうというのは稀で、自己資金で足りない分を銀行や公的機
関からの融資で調達したり、医療機器などはリースをかけたりすることにな
ります。
では実際に、開業時にどのくらいの金額の融資をどのような条件(金利・期
間)で受けられるのでしょうか?融資を行う金融機関の側に立てば、主とし
て下記のようなポイントが重要になってくることがわかります。
(1) 担保
(2) 保証人または保証協会の保証
(3) 事業性
(4) ドクター本人の収益性、既存のバランスシート
一般的には、上記の(1)か(2)がないと融資を受けることが難しいと考え
られているかもしれませんが、昨今は民間金融機関において開業医のための
無担保・無保証の融資商品も出てきており、資金調達についてそれほど悲観
する必要はなくなってきています。
◆ (1) 担保 - 土地・建物、現金・預金、株券、債券など
一般的に(特に従来は)、金融機関は万が一開業がうまくいかなかった時の
債権の保全策として、まず借入人である医師所有の土地建物などにあらかじ
め担保権を設定することを考えます。開業のために土地・建物を購入する場
合は、その土地・建物に担保権を設定することが多いですし、そうでない場
合は、医師の自宅、現預金、株券や債券などを担保として提供することが考
えられます。
いずれにしても、ある程度の担保が提供できる場合は、その担保の価値相当
の資金を借り入れることは難しくないと言えます。ただし、土地・建物など
価値がぶれるもの、換金性がやや低いもの等の場合は、金融機関内部で掛け
目(例えば取引価格の0.8など)を考慮することがありますので注意が必要
です。
◆ (2) 保証人
提供できる担保がない場合、あるいは担保価値が融資額に足りない場合は、
保証人を立てることがあります。通常は同一生計の御家族は保証人としては
認められないことが多く、それ以外の第三者で保証人を探すことになります。
保証人に関しては、本人の同意はもちろん必要ですが、ある程度の収入や収
入の安定性がなければ保証人として認められないこともあります。
保証人を立てることが難しい場合は、保証料を払って公的機関(保証協会等)
に保証してもらうという手段があります。ただし、金額が大きくなると保証
協会の保証を受けるためにも、自己資金がいくら以上必要だとか、担保を提
供することが必要な場合があるのでなかなか容易ではありません。
◆ (3) 事業性 ・・・ 立地、事業計画の妥当性、臨床医としての資質、
提供する医療・サービスの質や患者のニーズとの合致性等
たとえ担保・保証が十分にある場合でも、開業における事業性は重要なポイ
ントになってきます。つまり、事業(開業)の実現性が高いか、また業界全
体の流れや患者のニーズに合っているか、さらには事業をマネージしていく
ドクターの資質は十分か、、、などです。それを具体的にあらわしたものが
「開業プロセスと成功するポイント 第2回」でもご説明した事業計画書です。
融資を受ける際には、担保や保証人だけでなく、事業計画を綿密に立て、第
三者に対して説得力のあるものにまとめることがとても大切です。
特に、昨今出てきている無担保・無保証の融資商品の場合、金融機関が融資
の可否を決定する際には、事業計画そのもののみを客観的に分析した上で、
事業のリスクが十分低い(借入の返済が無理なく可能である)かどうかを判
断することになります(金融機関が一般企業や政府に対して行うプロジェク
トファイナンス の考え方)。この場合「事業が実現性の高いものであり、
ドクター自身にそれだけの資質がある」ということをさらに一層アピールす
る必要があります。
◆ (4) ドクター本人の収益性、既存のバランスシート
・・・ 既存の借入、自己資金
最後になりましたが、金融機関にとっての重要な関心事のひとつは、借入人
であるドクター個人についてです。開業における融資も、一般企業や個人に
融資する際と同様、借入人本人の(a)収益性(コスト面を含めて)と、(b)資
産・負債を金融機関が分析し、融資の可否・条件を決定します。
(a)収益性
医師であるという属性と経験年数からおおよその年収のレンジは分かります
ので、あとは実年齢や専門などから、万が一、開業がうまくいかなかった場
合に再度勤務医に戻ることが可能なのか、再度勤務医に戻った場合にいくら
収入が得られるのかなどについても、融資の際の判断材料になります。
また、裏付け書類がとりにくいところではありますが、ご家計の支出(コス
ト)も判断材料の一つになります。例えばどんなに高い収入を得られる専門
医でも、「子どもが5人いて、すでにそのうち2人が私立の医学部に在籍して
学費がバカにならない」など、極端な例ではありますが、家計の固定費が大
きいと収益性はその分をマイナスして考えなければなりません。
(b) 資産・負債
一方、資産・負債に関しても、融資を申し込む際にある程度の資料を提出す
る必要があります。すでに住宅ローンや自動車のローンで既存の借入がある
場合は、その分を開業時の借入額にプラスして返済能力を考えますので、受
けられる融資の額が減る要因となります。某銀行の担当者は「住宅ローンや
自動車ローンは別に担保が設定されているとは言え、返済を考えた時、たと
え医師であろうとも、1個人に対してトータル1億円以上の融資は常識的には
難しい」と話されていました。一概に1億円までは借りられるとは言えませ
んが、ひとつの目安にはなるかと思います。
以上から一般的に開業時に借りられる金額は、
(A) 担保・保証がある場合はその範囲
(B) 事業の実現性が高く、さらにそれを示すことができれば(A)以上も可
(C) ドクター個人に既存の借入がある場合は残高と合わせて1億円前後
ということになります。冒頭で開業資金は4000万~7000万とお話しました。
上記の(A)や(C)の状況を変えることはそう簡単ではありませんが、(B)の事
業の実現性を高めることによって、自己資金がほとんどなくても開業は可能
ということになります。(但し、制度融資など公的な融資を使う場合、保証
協会の保証を使う場合などは自己資金がいくら以上必要、という要件がある
ので、少しでも多いに越したことはありません。)当社でも、事業性の見極
め、事業計画書や融資申込書の作成、資金調達先のご紹介・交渉など、個々
のドクターのご事情にあわせて行っています。
また融資における金利は、上記のポイントを総合して判断されます。たとえ
ば融資のリスクが低ければ安い金利で借りられますし、リスクが高ければ高
い金利とならざるを得ません。また調達先機関によってもさまざまです。比
較的安い制度融資等から高いリースまで年利1%台から5%台くらいまで開き
があり、また融資の借入期間やその期間での金利が固定か変動かによっても
変わってきます。
次回は、実際にどのような調達先から借り入れられるのか、またそれぞれの
条件やメリット・デメリットは何かをご説明させていただきたいと思います。
( コンサルタント 安宅 雅美 )
|