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- メディヴァ メールマガジン No.002(2004/07/05)
連載 開業プロセスと成功するポイント ─> 第2回 <事業計画と作成のポイント>

前回は、経験、スキルの棚卸とコンセプト設計について、お話をさせていた
だきました。なんとなくかもしれませんが、皆様の頭の中でも、漠然として
いたイメージが少し整理されたのではないでしょうか。今回は、事業計画に
ついてお話させていただきます。

事業計画とは何か、どのように作るのか、明確に思い浮かばない方もいらっ
しゃるかと思います。事業計画は、事業の規模や必要な資金などに応じてい
ろいろな形がありますが、その目的と項目は以下のようなものになります。


■ 事業計画の目的

事業計画の目的は、開業する診療所の医療やサービスの内容を整理し、同時
に資金面での投資効果と収支をまとめることで、事業に必要な人・もの・お
金を明確にすることです。事業計画を立てることで、施設を探したり、設備
や機材を購入したり、銀行融資などの相談にいくことができます。


■ 事業計画に盛り込む項目
 
(1) 事業背景
  (2) 理念、コンセプト
  (3) 患者像と市場調査結果
  (4) 提供する医療、サービスの説明
  (5) 設備、機器導入計画
  (6) 投資と資金調達計画
  (7) 複数年度の収支シミュレーション
  (8) 開業までのスケジュール

つまり事業として始めたいこと(ターゲット患者、提供する医療、準備する
機材)は何か、それによる収支、投資計画は適切なものとなっているかとい
うことを、第三者が見てもわかるようにまとめてあることが重要です。特に、
開業を考え始めたときは、あれもこれもといろいろなことに手を広げたくな
ってしまい、実際には運営しきれないほどの検査機器や設備が必要になって
しまうことがあります。事業計画書は、具体的な数字によって事業の実現性
を確認をするための書類でもあります。また、銀行融資を受ける際の重要な
書類となりますので、今までにない特色をもつ、実現性の高い事業を設計す
ることを意識することも重要になります。


◆ (1) 事業背景

医師として病院の医療に携わっていると、個別の医療行為の専門性が高まる
一方で、医療界全体の動きには疎くなってしまうことがあります。また、銀
行などの金融機関の方にとっては医療は一つの業界にすぎず、最新の情報に
ついてはあまりアップデートされていないこともあります。ご自身の知識の
整理として、また第三者に説明するときのツールとして、事業背景を言葉に
まとめることが重要です。例えば、「最近の介護保険導入とその保険財政の
圧迫に伴い、介護予防のリハビリが必須となってきている」とか、「女性の
医療ニーズが高まる中、婦人科+乳腺が可能な女性外来が求められている」
とか、「急性期病院の平均在院日数短縮に伴い、退院後に在宅医療をうけな
がら施設に通う患者が増えてきている」などといったテーマです。可能であ
れば、雑誌等で手に入れられる数値データを盛り込み、より客観的な判断に
おいて納得できる背景をまとめると良いでしょう。


◆ (2) 理念、コンセプト

前回、スキルの棚卸とコンセプト設計についてお話をさせていただきました
(創刊号)。事業計画における理念とは、それらのスキルを棚卸したあとで、
どのような医療を目指したいか、どのようなサービスを提供するかの指針と
なるものです。開業後にもつながる重要な要素ですので、じっくり時間を使
って考えていただきたいところです。このとき、より深く考えていただきた
いのは、「地域のかかりつけ医として患者のために尽くします」というよう
な、医療として一般的なこと理念に掲げてもインパクトが薄いということで
す。より具体的に、どのような形で尽くすのかを深く考え、例えば「患者様
の家族みなさまとの付き合いを大事にしたい」、「病気になる前の予防から
お付合いをしたい」、「24時間の往診を実現したい」といった言葉によって、
クリニック独自の方向性を見出してほしいと思います。


◆ (3) 患者像と市場調査結果、
◆ (4) 提供する医療、サービスの説明

市場調査については次回以降で詳しくご説明しますが、事業計画には、
  ─ どのような患者さんの
  ─ どのような疾病に
  ─ どのような医療を提供するのか、、、ということへの回答が必要です。

患者さんについて、年齢や職業、家族構成などをイメージし、疾病はより具
体的に列挙することで、対象となる患者さんの数は自ずと明らかになります。
また、提供する医療が明確になることで必要となる施設の広さや検査機器の
明細なども明らかになります。もしコンセプト設計の中で少し欲張りすぎた
内容を盛り込んでいたとすると、患者さんの像や疾病において絞込みができ
ず、まとめることができないはずです。まとめきれない場合は、もう一度コ
ンセプトの立案に戻ってこのクリニックで実現する医療についてよく考えて
みることが必要となります。


◆ (5) 設備、機器導入計画

事業計画としては、前述の実現する医療行為にあわせて、導入する設備や機
器をリストアップしておけば十分です。しかし、機器一つとっても性能や付
属品は様々であるため、その詳細な選択には注意が必要です。特にクリニッ
クでは1日に来院する患者さんは限られていますので、あまり機器を盛り込み
すぎると機器個別での採算が取れなくなる可能性がでてきます。

<例えばMRIの場合>
  性能  購入価格(概算) 機器メンテナンス 収入単価 1日必要患者数
――――――――――――――――――――――――――――――――――
  1.5T   1億5千万     1500万/年    2万円    6人
  1.0T   1億        1000万/年    2万円    4人
  0.3T   6千万       500万/年    2万円    2人

これは臨床検査技師の人件費やオプション・備品などの費用を考慮していな
い概算の計算に過ぎませんが、同じMRIであっても性能と価格に応じて、採
算が変わってくることはご理解いただけるかと思います(注:むやみに安い
医療機器をお薦めしているわけではありません。あくまで実現したい医療内
容とそれに対する患者ニーズのバランスにおいて、そろえる機器を一つ一つ
選定する必要があるという意味です)。また実際に購入にあたっては、業者
間の相見積もりなどにより上記よりも安く購入できることもありますので、
あくまで参考程度にしていただけたらと思います。


◆ (6) 投資と資金調達計画

上記の検査機器の購入とあわせて、全体資金の投資と資金調達の計画が必要
です。当たり前ですが、どのような事業もそれを始めるにあたっての資金が
調達できなければ実現にいたることはできません。

主な投資の項目は以下の通りです。特に前払いの家賃や運転資金は見逃しが
ちなので注意が必要です。
 ・土地購入費、あるいは賃貸における保証金
  ・家賃等の前払い費用
  ・建築費(賃貸における内装費)
  ・設備機器(CT、MRI、X線等の高額医療機器)
  ・その他機器(オートクレープ、分封器、冷蔵庫など)
  ・情報システム(電子カルテ、レセコンなど)
 ・運転資金(3ヶ月程度の費用見合い)

資金調達には以下の資源が考えられます。当然、金利負担などが安いに越し
たことはありませんが、事業の実現に至るためには、一時的な無担保融資で
しのぐことも検討に値します。資金調達については次回以降、融資は次項の
「開業資金の調達において」で詳しくご説明いたします。
 ・自己資金
  ・政府保証融資
 ・担保融資
  ・無担保融資


 ◆ (7) 複数年度の収支シミュレーション

単年度の収支シミュレーションは、本などでもよくみかけることと思います。
しかし、事業は生き物であって年を経るごとに変わっていきます。また、ど
のような事業も初年度は赤字で始まることが多いので、必然的に資金繰りが
苦しくなることが多いのが現実です。その意味でも、5~10年程度の複数年
を見越した収支のシミュレーションが必要になります。患者数の増加やそれ
に併せた人員の確保をベースとして、累積の収支や資金繰りを同時に検討し
ておきます。開業後にも当初の計画と見合わせていくことで、予想していた
ほどうまくいかなかった場合はいつキャッシュが不足するのか、また逆に予
想以上に事業が回りだした場合の前倒しすべき投資はどれかといったことを
確認していきます。


  ◆ (8) 開業までのスケジュール

  ・土地選定     半年~1年
 ・建築、内装   3ヶ月~1年
 ・行政申請   1週間~2ヶ月(都道府県による)
 ・開業前準備  2週間~1ヶ月

上記のスケジュールは概枠ですが、つまりはどれほど短くても半年、通常で
1年程度の猶予をみたスケジュールを設定する必要があります。ただし、土
地選定は水物であるため、見つかるときには3日で見つかりますし、1年たっ
ても見つからなかったこともあります。また、医局や病院を円滑に辞めるた
めには相応の時間も必要ですので、大まかなスケジュールを立てつつ、土地
の選定状況を確認して微調整していくことになります。


以上が事業計画と作成のポイントになります。
最初の計画は、土地選定によるところもあるため、明確にならない面も多い
と思います。ただ、土地選定や資金調達を開始するにあたって、考えをまと
めるために、まずは簡単に実際に事業計画書を作ってみてはいかがでしょう
か。

次回以降、事業計画における各項目について、詳細をご説明していきた
いと思います。次は「立地選定」です。


(取締役 コンサルティング事業担当 小松大介)

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