|
日本医療機能評価機構による認定病院は、平成16年6月現在1260病院とな
り、病院の1割を越えた。評価方法については、形式要件に偏っているであ
るとか、詳細結果が開示されないであるとか問題点は指摘されているが、各
病院が外部の目で自院を見つめなおし、病院改革の1ステップとするという
意味では相当な成果が出ているのではないだろうか。
一方、病院経営評価の面では昨年より「病院格付け」が言葉としては大流行
である。三井記念病院が国際的な格付け機関のフィッチ社によるシングルA
格付けを受けた(予定)、というニュースもあった。しかしその後、病院の格
付けが続々続くという訳ではないようだ。これは、「格付け」基準が未整備で、
必要なデータベースが整備されていないことや、病院のなかの会計・経営情
報が未整備で「格付け」に耐え得ないことが原因とされている。同時に「格付
け」は、基本的には「資金調達」を目的として行われるため、資金の不要な病
院、銀行融資等の代替手段がある病院、または資金が必要でも「格付け」を受
けることにより逆効果になることを恐れる病院にとって「格付け」は関係ない
ものと定義されてしまうからでもあろう。
しかし「格付け」は本当に資金調達のためなのだろうか。最終的な「格付け」
成績(シングルA、トリプルB等)はそうかもしれない。しかしながら、医療
機関の経営を客観的な基準に照らし合わせて「評価」することは、病院を経営
する上で大きくプラスとなるはずだ。
当社では、病院経営の客観的評価として「格付け」ではなく、「ベンチマー
キング」を実施している。「ベンチマーキング」とは一般産業界では広く行わ
れている手法で、自己の経営状態をベストプラクティスのところと比べて、
差異を評価し、原因を分析することにより、改善活動に繋げる経営手法であ
る。
「ベンチマーキング」に必要なデータベースを構築するために、当社は(株)
あおぞら銀行と提携し、数年前より調査を実行し、病院の経営状態を1000以
上の指標に落とし込み、順位、偏差値を出している。この「ベンチマーキン
グ」調査の結果、その病院が全国レベルで見て、どの程度のポジションにあ
るのかを評価し、経営課題を明確にすることが出来る。
例えば病院経営上、継続的にホットな話題である「医療連携」を例に取ろう。
「医療連携」が病院のトップマネジメントにとっても戦略的な課題となった背
景には、言うまでもなく医療の高度化・専門化と医療財政効率化への要請が
ある。医療的効果と経済的効率を追求すると、医療機関の機能分担とその間
のシームレスな連携が一つの解となる。「医療連携」を促進するために、平成
12年4月の診療報酬改定においては、急性期加算が①紹介率30%以上、②平均
在院日数20日以内、③入院外来比1対1.5を充たす病院に付与されることにな
り、「投資を必要としない」収入増として一気に脚光を浴びた。
「医療連携」の状況をベンチマーキングする場合、まず指標となるのは「紹
介率」であろう。例えば2002年の数値でみると、地域ナンバーワン・クラス
の急性期病院同士を比べた場合、紹介率は最大79.1%である。
しかし、「紹介率」をベンチマーキングしただけでは、「結果」は比較できる
が「原因」までは究明できない。より詳しく見るために、「入院ルート比率」を
見てみると、「自院外来比率」が最小27.1%、平均53.5%、「外部施設からの紹
介比率」が最大52.9%、平均17.6%、「救急車による入院比率」が最大35.1%、平
均21.2%である。一方、「外来ルート比率」を見ると、「自院直接外来比率」が
最小18.3%、平均56.8%、「外部施設からの初診紹介比率」が最大40.5%、平均
20.3%、「救急車搬入救急外来比率」が最大36.9%、平均14.2%である。
更に「医療連携」が「機能分担」を前提とするため、「ベンチマーキング調査」
を用いて、自院の地域における「役割」を把握してみよう。例えば、「単価」の
数字を見てみよう。「単価」は、病院に集まってくる患者の医療密度を推測す
る代替指標で、地域における「役割」を推測するために役立つ。病床単価の最
高値(2002年度)は、全体では69,663円、科目別では、例えば内科が59,814円、
循環器科が146,037円、小児科が35,466円、整形外科が36,536円、脳神経外
科が44,826円となっている。外来単価を見ると、全体で20,606円、内科が
21,823円、循環器が20,950円、小児科が8,848円、整形外科が9,969円、脳神
経外科が16,354円である。
これらの数字は一つの例に過ぎないが、自院の実績数字をこういう値と比
べ、順位、偏差値を明らかにすることにより、自院の課題は見えやすくなる。
経営収支は黒字でパフォーマンスも比較的良いと思われていた病院が、科目
別に見てみると、その黒字の大部分を透析収入に頼っており、他の科目にお
いてはさして見るべきものがなく、地域医療のなかで実際果たしている役割
は、2番手、3番手であることが見えて来た例もあった。また、先進的な取り
組みを行っているとして注目を浴びていた地域の中核病院が、たまたま他の
病院がない地域なので中核足りえただけであり、今後医療圏が広がる可能性
のなかで、極めて危うい立場にある場合もあった。
病院の経営者の多くは当然のことながら、自院が「医療的に高度で先進的
な病院」としての役割を担いたい、と思うであろう。しかしながら問題は、
その実現可能性、もしくは実現までに越えなくてはいけないハードルであり、
実現ためのステップである。平成15年8月末の病床区分の届出が、7:3と一
般的な推測より大幅に一般病床が多かったのも、療養型病床群の施設基準や
点数設定について先行き不透明感があったからでもあるが、自院の「客観的
評価」が出来ていない病院が多かったためでもある、と思われる。
元々、当社がこのような「ベンチマーキング」調査をやり始めた経緯は、病
院の経営を客観的に測れて、役に立つ指標がなかったからである。各病院は、
毎年かなり莫大な量の数値・資料を作成し、役所に提示しているのであるが、
第三者はおろか、提出元である病院の経営者に役立つ形でフィードバックさ
れることも稀である。厚生労働省から発表される数字の多くは、全病院(一
般病院)を包含しているため、例えば各地の地域ナンバーワン病院同士を比
べるなど、経営に役立たせることも困難である。
病院経営改革を行う上で課題の所在を明らかにするために、「客観的評価」
は重要である。また、意識の高い経営者であれば、課題の所在は薄々分かっ
ている場合も多く、組織全体で同じような問題意識をもってもらうことがよ
り大きなハードルであることも多い。ベンチマーキングによる評価は、経営
者の言葉に「説得力」を持たすのにも大いに役立つと思われる。マクロ的な医
療改革のためには、第一ステップとして経営ベンチマーキング・データベー
スの構築が行われるべきではないかと思うが、いかがであろうか。
(代表取締役 大石 佳能子)
|