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連載コラム
Profile
株式会社ケアレビュー
代表取締役 加藤良平
1964年10月愛知県出身。1987年一橋大学経済学部卒業。大手都市銀行の営業企画部門で収益計画や業績評価、マーケティングマネジメント改革を担当。その後ITベンチャー企業のCFO、上場企業や大手医療法人の経営企画責任者を歴任。
各国の医療制度や病院経営に関する研究を進める中で、利用者の視点に基づく医療界の変革に大きな社会的意義を見出し、2004年11月に株式会社ケアレビューを設立。
http://www.carereview.co.jp
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第10回 大銀行の組織経営

話は変わりますが、私はかつて都市銀行の本部で国内営業部店(約500部店)の業績評価を行っていました。具体的な仕事の内容としては、以下のような流れになります。

1.銀行全体の中期経営計画を策定する
2.当期中の業績の進捗状況を踏まえて、翌期の各部門の重点施策を策定する
3.重点施策を織り込んで、部門全体の収益・預金・貸出金・その他各種サービスの目標を策定する
4.部門全体の目標を、営業部店別の行動指針とガイドラインに落し込む
5.ガイドラインに基づいて各部店が実行計画を策定し、目標を調整する(部店長と合意する)
6.正式な数値目標と、詳細な業績評価体系(得点計算方法)を通知する
7.目標に対する実績を集計して、業績評価を行う(業績表彰部店や改善指導部店を決定する)
8.業績評価結果に基づき、各部店の賞与配分額や人事考課に反映する

この仕事は、目標や評価ポイントの置き方ひとつで数万人の銀行員の半年間の思考や行動パターンが変わるほど重大な責任のある仕事でした。実際に、自分がつくったスプレッドシートですべての融資担当者が顧客採算を計算したり、本部が通知するガイドラインや評価体系に従って大きな組織が一糸乱れぬ動きをするのは、さながら軍隊の中央司令室にでもいるような錯覚さえ抱きました。

しかしながら、これは相当に危険な組織経営のスタイルです。どこの銀行も似たような方法で業績評価を行っていましたが、各部店の実行計画をある程度吸収しているとはいえ、実際にはいわゆる「ノルマ」が最初から課されているために現場での裁量はほとんどありません。結果的に、お客さまのニーズよりも本部の意向を重視する銀行員が評価され、日本の銀行は社会から求められる使命からどんどんかけ離れた存在になっていきました。

◆◇◆

当時の反省の意味も込めてお話ししますが、いかにバブルの崩壊で大きな不良債権を抱えてなりふり構わず収益を拡大しなければならない時期であったとは言え、やはりもっと顧客ニーズに合致した目標設定や評価を行う仕組みが必要であったと思います。そして、現場の意見が本部を動かすような組織設計や、お客さまのニーズや期待に応えられた銀行員こそがしっかり評価されるような仕組みが必要であったと思います。とくに、銀行のような公共性の高い組織であればなおさらです。

最近では、銀行の財務内容が回復したにもかかわらず、逆に社会からの高収益批判が強まっています。その根底には、今でも変わらない上記のような組織経営スタイルに原因があるような気がしています。

◆◇◆

日本の医療制度のもとでは、厚生労働省が銀行本部の立場であり、医療機関が各部店の立場だと置き換えられるでしょうか。医療機関は基本的に国が定めた基準に従って医師免許や開設許可を得て、国が定めた通りの人員配置や施設基準を求められ、国が定めた診療報酬体系に従って評価されています。収入と支出を直接的にコントロールされているという意味では、銀行本部が部店を管理する以上に強い統制力が働いているように思われます。

はたして、社会のニーズに合致した医療を提供している医療機関が、適正な収益を上げられる仕組みになっているでしょうか?診療の現場で患者から評価されている医師や職員が、適正に報われるような仕組みになっているでしょうか?

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